日本にグラウンドアンカーが導入され50年が経過し、グラウンドアンカーの老朽化による性能低下が確認されています。

これらのグラウンドアンカーの多くは1988年に改訂された「グラウンドアンカー設計・施工基準 (JGS:D1-88)」以前に施工された「旧タイプアンカー」であり、現在のアンカー(ランクA)に比べると防食性能に問題があります。

そのため、旧タイプアンカーを点検・調査し、現在のアンカー(ランクA)と同等の防食性能まで対策する技術が求められています。


概要

旧タイプアンカー補修による維持管理

テンドン破断原因の90%以上はアンカー頭部および頭部背面だといわれており、下図①②にあたるその部分を補修することで旧タイプアンカーの延命化対策・耐久性向上対策・補修と補強が可能です。

旧タイプアンカー問題点
1

防食性能に問題のある、コンクリートキャッピングによる頭部処理

2

アンカー頭部背面の防錆処理なし

3

アンカー体部は一重防錆造


施工プロセス

試験・リフトオフ

旧タイプアンカー問題点

既設のくさび式アンカーは緊張余長部が短く切断されているため、リフトオフ試験や維持性能確認試験を実施するには、カプラーによる接続が必要です。カプラーはPC鋼より線の径や使用本数に応じて適切なものを選定します。

頭部背面調査や維持性能確認試験を実施するには、荷重を解放する必要があります。

再緊張余長が不足し、通常のカプラーで荷重解放が行えない場合は、除荷カプラーを使用します。

背面補修

背面試験

旧タイプアンカーにおいては頭部背面の保護が実施されていないため、この部分を補修することが重要となります。

再定着

厚み最小アンカーヘッドの使用

頭部背面の補修完了後、再定着および頭部保護を実施します。再緊張に必要な余長が得られない場合は、アンカーヘッド一体型支圧板や低タイプのアンカーヘッド等の特殊部材を使用します。

頭部保護は、頭部キャップおよび内部の防錆油充填が標準です。

モニタリング

掛かっている荷重のモニタリング

アンカーの残存引張力を経時的に調査するためには、頭部に荷重計を設置する必要があります。

既設アンカーは再緊張余長が短い場合が多く、通常の荷重計を設置することは困難です

そのため、薄型の油圧式荷重計が有効です。またブルドン管を取り付けることにより、目視による荷重確認も容易に行えます。

+緊急対策

緊急対策

鋼棒タイプの旧タイプアンカーにおいては、腐食による破断で頭部が飛び出す事例が発生しています。このような事故を事前に防止するために、頭部の固定や破壊した頭部コンクリートの飛散を防止措置を行う必要があります。