グラウンドアンカーのテンドンとグラウトの付着強度

概要

    弘和産業㈱ 正会員 川崎 廣貴

    弘和産業㈱ 野口 明

    弘和産業㈱ 正会員 末吉 達郎

グラウンドアンカーのアンカー体では、アンカー力を与えられたプレストレス状態のテンドンが直接グラウトと接触し、この界面での付着抵抗により、アンカー力はテンドンから グラウトに伝達される。さらに、グラウト外周面と地盤との界面での摩擦抵抗により、アンカー力が地盤まで伝達することで、アンカー体は地盤に拘束状態となる。これにより、グラウンドアンカーは、 頭部でのアンカー緊張・定着後に自由長間の構造物や地盤にプレストレスを与えることができる 。当該部の挙動は、テンドン・ グラウト ・地盤の3層2界面の境界値問題であり、アンカーの種類が引張型・圧縮型・分散型の3種類、施工地盤の特性も種々のものがあるため、厳密な相互作用挙動は複雑なものとなっている。

一方、現場でアンカーの引抜試験を実施して、アンカー体と地盤の極限摩擦抵抗を求める場合は、グラウトとテンドンの付着強度(極限付着抵抗力÷見掛け周長)を設定して、付着切れが生じずに、地盤との極限摩擦抵抗が求まる アンカーの試験仕様を設計する必要がある。しかし、 グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説(アンカー基準)1)では、 許容付着応力度のみが記され、付着強度が明示されていないことから、引抜試験の仕様を設定する上で、困難性が生じている。

ここでは、 グラウトとテンドンの付着試験の実施による付着強度検討、およびコンクリート標準示方書の異形鉄筋の付着強度式とアンカー基準の許容値との関係から付着安全係数の算定を試みたので、その結果を報告する。



グラウンドアンカー構造物安定の設計方法

概要

    弘和産業㈱ 正会員 川崎 廣貴

    弘和産業㈱ 野口 明

既設構造物や新設構造物の耐震性等の外的安定をより向上する目的で、グラウンドアンカー(以下、アンカーによるプレストレス補強対策が使用される。対象構造物は、橋台・ 擁壁・ 砂防堰堤・ダム・岸壁・防波堤・建物など多岐にわたっている。当該構造物の外的安定の設計は、一般に滑動・転倒・支持力の 3 安定モードで照査する。アンカーによるプレストレスは、 本抵抗力が外力の起動力以上の場合に、構造物の変位挙動を抑止でき、その安定性が確保できる。

構造物の外的安定のアンカー設計では、 滑動・転倒・支持力で剛体モードの安定状態を仮定して所要の計画安全率を満足するように、必要アンカー力を求める。一方、アンカーが構造物を通過する箇所によっては、構造物変形状態を見込んだ適正なアンカー仕様を設定する必要があるのが留意点である。特に、アンカー傾角が 90°付近の急角度で、構造物の基礎底面を通過するようにアンカー設置の場合は、転倒安定で計画安全率や許容偏心量を満足させても、基礎底面アンカー位置が浮上することがある ので、この変位を考慮したアンカー仕様の設計が重要である。

こうした観点を踏まえ、ここでは、構造物外的安定の確保を目的としたアンカー設計方法を整理し、一連の設計式を取りまとめたので、その内容を報告する。