国土交通省新技術情報システム
    NETIS登録番号 HK-230017-A

透明ヘッドキャップ

本工法は、従来アンカーの頭部耐久性の弱点であったグリース充填と背面止水構造をなくし、新構造の透明キャップグリースレス定着具、およびプレート止水構造の採用により、安全性・耐久性・ライフサイクルコスト(LCC)経済性を優れたものにしています。

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概要

EHDアンカーHP工法の構造概要

グラウンドアンカー EHD-HP概念図

EHDアンカーHP工法(HP:ハイパーの略)は、土木学会規準(JSCE-E141-2018)で100年耐久性(塩分環境で設計耐用年数100年)の高付着型の硅砂付着ECFテンドンを使用しています。

アンカー体はグラウトひび割れ考慮のECF樹脂一重防食構造での100年耐久性仕様と、高降伏付着強度を実現しています。

頭部は新形式のプレート止水構造を用いた高耐水圧性透明キャップ・グリースレス定着具採用によるメンテナンス性の向上を実現した、安全性・耐久性・ライフサイクルコスト経済性に優れた新しいアンカー工法です。

なおプレート止水構造・透明キャップおよびグリースレス定着具は以下に示す特許工法です。

・特許第6861975号 「テンドンの頭部定着構造」

・特許第6948658号 「ヘッドキャップ構造」

・特許第7166550号 「テンドンの頭部定着構造」

    

本工法と従来アンカー工法との比較

グラウンドアンカー プレート止水構造
EHD-HPグレード

アンカー頭部の支圧板止水構造の種類と特徴

止水構造種類 プレート止水構造 背面止水構造
①概要

・支圧板上面側で自由長シース切断部を保護する

・止水性能は、支圧板内設置の止水ゴム圧縮力を用いる

・支圧板背面側で自由長シース切断部を保護する

・止水性能は、グリースなどで内部空間を100%充填閉塞することで達成可能である

②特徴

・止水ゴム圧縮により耐水圧性能を高くできる

・耐水圧性能がグリースなどの内部充填状態に依存しない

・背面管接続のため耐水圧性能をあまり高くできない

・耐水圧性能がグリースなどの内部充填状態に依存する

③保全段階の
頭部背面調査

・背面止水構造がないので不要 ・背面止水構造なので必要

EHDアンカーHP工法の特長と技術提案項目

 EHDアンカーHP工法はグラウンドアンカーの技術提案に最適です。

工法特長 技術提案項目 適用メリット 概要

①アンカーテンドンでの耐久性能の向上

・経済性
・安全性
・品質
従来技術の50年程度に比べて、耐久性100年の硅砂付着ECFテンドンを使用 硅砂付着ECFテンドンは、土木学会JSCE-E141-2018規定のエポキシ樹脂被覆厚0.4mm~1.2mm(平均厚0.6mm)であり、塩分環境で100年耐久性の十分な防食性能を有する。
従来技術は、劣化しやすいグリースによる耐久性保持である。

②頭部支圧板背面側での耐水圧性能の向上

・安全性
・品質
従来技術のほとんどゼロに比べて、耐水圧性能2.0MPaを確保 新しいプレート止水構造の採用により、支圧板内止水ゴムの圧縮型止水になったことで、2.0MPaと高い耐水圧性能を確保できる。
従来技術は、背面止水構造でグリース充填などに応じた耐水圧抵抗なので、密封性と耐水圧性能が劣り、発錆が生じやすい。

③頭部構造での耐久性能の向上

・経済性
・安全性
・品質
従来技術の早期劣化する頭部グリース利用をなくして、密封構造とグリースレス定着具で塩害環境促進試験3600hの防食性能を確保 頭部構造のプレート止水構造とOリングの密封性能、およびNiめっきのグリースレス定着具(くさび・アンカーヘッド・ナット)を用いて、長期(3600h)の塩水噴霧試験を行った結果、定着具の発錆がなく、十分な頭部密封性と防食性能が確保できる。
従来技術は、頭部キャップ内がグリース充填であり、5~10年程度でほとんどが発錆する。グリース交換が必要になる。

④アンカー体でのテンドンのグラウト付着強度の向上

・安全性 従来技術の標準的なものに比べて、付着強度1.5倍に向上 従来技術のテンドン(普通PC鋼より線)とグラウトとの付着強度に比べて、強度1.5倍になる。
設計基準強度f’ck=24N/mm2の場合で許容付着強度τca=1.2N/mm2が使用できる。この効果により、アンカー体でのひび割れが少なくなり、安全性が向上する。

⑤過荷重アンカー力の減調整機能の向上

・経済性
・安全性
減調整機能が従来技術の10~20mmに比べて1.5倍の30mmに向上したことで、増アンカー対策経済性とアンカー安全性が向上 近年の大地震や豪雨などの不測事態による過荷重アンカー力に幅広く対応可能な減調整機能を有したことで、既設アンカーが活用でき、増アンカー対策の必要性が小さくなるので経済性が向上する。
減調整幅が広がり、アンカー力低下が大きくなるので安全性が向上できる。

⑥メンテナンス省力化の向上

・メンテナンス性

従来技術のアンカー頭部調査の労力を90%縮減 プレート止水構造とグリースレスの透明キャップにより、従来技術で必要であったアンカー頭部背面調査と頭部詳細調査がなくなったので、頭部調査の作業手間が減り省力化できる。

⑦ライフサイクルコスト経済性の向上

・経済性 建設段階コストと保全段階コストの合計で30%縮減 透明キャップ・グリースレス定着具・プレート止水構造という新しい3構造の採用で、保全段階のアンカー調査コストが縮減できることから、建設段階コストを含むライフサイクルコストを縮減できる。

⑧頭部処理作業の省力化・施工性の向上

・施工性 従来技術で必要なグリース充填・交換がなく、かつ、プレート止水構造で背面部作業がないので、省力化と施工性が向上 頭部グリース充填や10年毎のグリース交換作業が不要なので省力化できる。プレート止水構造で、作業が難しい支圧板背面部のアンカー孔内でのシース切断や止水ゴム設置がなくなった。
施工の頭部処理工の背面処理0.16日/本がゼロになり、前面処理0.08日/本のみになるので省力化できる。

⑨頭部グリースレス化による環境保全のCO2削減効果

・環境性 頭部グリースレス化(グリース充填のゼロ化)でCO2をグリース単位重量で19.25kgC/kg削減 石油製品の頭部グリースのゼロ化で、グリース基油精製に必要な化石燃料利用と劣化グリース廃棄物の焼却がなくなる。
これに伴い、エネルギー消費や地球温暖化の低減に寄与できることから、環境保全のCO2削減に貢献できる。CO2削減効果kgCは、設計供用期間50年で、グリース単位重量の19.25kgC/kgで算出する。




部材概要

 

テンドン

 
硅砂付着ECFテンドン

本工法の硅砂付着ECFテンドンは、JIS G3536適合の低リラクセーションPC鋼より線SWPR7BLを使用し、土木学会100年耐久性規定(JSCE-E141-2018)に則して、エポキシ樹脂被覆厚0.4〜1.2mm(平均厚0.6mm)のエポキシ樹脂の内部充填・被覆を施しています。

エポキシ樹脂表面は高降伏付着強度になる硅砂を埋込んでおり、テンドンとグラウトとの降伏付着強度は普通PC鋼より線の1.5倍以上に向上しています。

硅砂付着ECFテンドン概念

硅砂付着ECFテンドン概念

自由長部空隙とアンカー体グラウトひび割れに伴う水侵入

自由長部空隙とアンカー体グラウトひび割れに伴う水侵入

エポキシ被覆厚とピンホール

エポキシ被覆厚とピンホール

エポキシ樹脂被覆厚と鋼材腐食の耐用年数

エポキシ樹脂被覆厚と鋼材腐食の耐用年数

テンドンの引張力比・伸び関係

テンドンの引張力比・伸び関係

頭部

     
頭部グレードと仕様

頭部キャップは、次の四種類が採用できます。

施工管理と保全段階の点検が簡便にできるCグレード(透明キャップ)仕様が推奨です。

グラウンドアンカー EHD-HPアンカーの種類
 
頭部構造の耐久性:頭部密封性とNiめっき定着具で実現

頭部構造は頭部キャップとプレート止水構造の密封性で、外部環境から遮断して定着具の耐久性を確保します。

定着具は頭部キャップ内密封空間が高湿度になる可能性があることから、二重安全性配慮措置として硬度が高く耐食性の高いNiめっき防食を採用しています。

Niめっきと亜鉛メッキの塩害環境促進試験の耐食性

Niめっきと亜鉛メッキの塩害環境促進試験の耐食性

EHDアンカーHP工法頭部構造の塩害環境促進試験の試験槽内状況

EHDアンカーHP工法頭部構造の塩害環境促進試験の試験槽内状況

EHDアンカーHP工法頭部構造の塩害環境促進試験(3600h)の耐食性

EHDアンカーHP工法頭部構造の塩害環境促進試験(3600h)の耐食性

 
グリース劣化状態

従来アンカーの頭部キャップ内はグリース充填となっています。現場調査の実態から、グリースは5~10年程度で劣化することから少なくとも10年頻度での経年交換が必要です。

本工法ではグリース交換が不要なグリースレスの頭部グレードを推奨しています。

グリース劣化形態

グリース劣化形態写真
 

自由長

自由長は、アンカー頭部の定着具からのアンカープレストレスをシースを利用した小摩擦損失でアンカー体に伝達する部位です。 本工法の自由長はテンドンPC鋼より線から考えると、100 年耐久性のエポキシ樹脂被覆防食層・グリース・シース・グラウトの4重防食構造となっています。

自由長断面

自由長断面

自由長部の止水

自由長部の止水

自由長空隙の止水

自由長空隙の止水

アンカー体

アンカー体は、アンカープレストレスがテンドンからグラウト境界面にせん断伝達し、次にグラウトから地盤境界面にせん断伝達する、2界面の抵抗機構でアンカーを地盤固着させる部位です。 一方、アンカー体の安全性は、地盤固着因子のテンドンとグラウトとの降伏付着強度が大きいほど向上します。珪砂付着ECFテンドンは普通PC鋼より線の1.5倍以上の付着強度を有するので、これによりアンカー体の安全性がより向上できます。

アンカー体断面

アンカー体断面

アンカー体のひび割れ発生機構

アンカー体のひび割れ発生機構

過荷重アンカー力の減調整

過荷重アンカー⼒は、豪⾬や⼤地震などの不測事態の構造物挙動によって⽣じる所要のアンカー耐⼒を超えた供⽤アンカーのプレストレスをいいます。この状態が⽣じた場合は、構造物の変状や隣接アンカーの状態を考慮して新規追加の増設アンカーなどを検討し、何らかの対策を実施した上で適正に過荷重アンカー⼒の減調整を実施する必要があります。

本工法は減調整長を標準で30mmに設定しているので、従来アンカーの10~20mm程度の調整長に比べて既設アンカー活用の経済性と安全性が向上します。

定着具の減調整の概念

定着具の減調整の概念

減調整のアンカー力・変位関係減調整のアンカー力・変位関係


設計

設計の基本

アンカーの設計は、道路のり⾯・斜⾯などの⼟⼯構造物の防災対策や橋台・港湾漁港岸壁・建築物などの⼀般構造物の補強安定対策などの適⽤構造物の分野に応じた設計⽅針・設計条件・設計⽅法にもとづき、アンカー対策⽤の必要抑⽌⼒検討を⾏います。

設計はアンカー設計手順にもとづき、補強対象の構造物とアンカーが安全性・使⽤性・修復性・施⼯性・ライフサイクルコスト経済性・保全管理性(維持管理性)で、適正になるように実施します。

設計手順

アンカー設計手順

 

アンカープレストレスの効果

アンカーのプレストレスは、⼟⼯構造物や⼀般構造物の安定を⽬的にしたアンカー定着直後からの設計供⽤期間で、テンドンおよび構造物に導⼊されている⼒であり、作⽤荷重がプレストレスを超えない限り構造物の変位をゼロに保持できる効果があります。

作⽤荷重がプレストレスを超えた場合は、アンカーばね剛性の⼩さい抵抗のため構造物に⽐較的⼤きな変位が⽣じることから、その変位量を求めて構造物および隣接施設への影響を照査する必要があります。

アンカープレストレス原理

アンカープレストレスの基本原理

 
プレストレスと超過力による変位

プレストレスと超過力による変位

 
経時変化と変位発生

プレストレス・残存引張力の経時変化と変位発生の関係

 

アンカー特性

本⼯法のアンカー特性は、JIS G 3536 規定の PC 鋼より線を組合せた極限耐⼒・降伏耐⼒、⼟⽊学会規準 JSCE-E141-2018 規定のエポキシ樹脂被覆厚 0.4mm〜1.2mm(平均厚 0.6mm)による100 年耐久性および規定リラクセーションによる純リラクセーション、グラウトとの降伏付着強度が普通 PC 鋼より線の 1.5 倍以上という特性を有しています。

EHDアンカーHP工法の力学的な設計用特性

EHDアンカーHP工法の力学的な設計用特性  

構造物分野のアンカー許容耐力

構造物分野のアンカー許容耐力 構造物分野のアンカー許容耐力注意  

アンカー許容耐⼒

アンカーの許容耐⼒はアンカー極限耐⼒またはアンカー降伏耐⼒をもとに、アンカーの適⽤構造物分野の限界状態に応じて設定された所要の安全性を有するものとし、アンカー規格は許容耐⼒が設計アンカー⼒を上回るように選定します。おもな適⽤構造物分野は、⼟⽊分野の⼟⼯構造物・⼀般構造物、港湾分野の港湾構造物、漁港分野の漁港構造物、建築分野の建築構造物です。

アンカー許容耐力とアンカー力比 伸びひずみ関係

アンカー許容耐力とアンカー力比 伸びひずみ関係

 

アンカー材料特性・施工状態でのプレストレス(アンカー力)の上限

アンカー材料特性・施工状態でのプレストレス(アンカー力)の上限  

EHDアンカーHP工法(EHD5)の許容耐力 (kN)

EHDアンカーHP工法(EHD5)の許容耐力 (kN)  

EHDアンカーHP工法(EHD6)の許容耐力 (kN)

EHDアンカーHP工法(EHD6)の許容耐力 (kN)  

アンカー体設計

アンカー体は、テンドンとグラウトとの付着抵抗、およびグラウトと地盤との摩擦抵抗の 3層 2 界⾯のせん断伝達機構が確実に成⽴する必要があり、プレストレス永続作⽤のアンカーを所要の安全性を有して地盤に固着する重要な部位です。アンカー体⻑は、最⼩アンカー体⻑3.0m・テンドン拘束⻑算出値・アンカー体⻑算出値の中で最⼤値を 0.5m 単位で切上げて丸めた長さとします。

テンドン降伏付着強度と許容付着応力度の関係 (N/mm2)

テンドン降伏付着強度と許容付着応力度の関係 (N/mm^2)  

アンカー体設置地盤の摩擦強度

アンカー体設置地盤の摩擦強度  

摩擦安全係数

摩擦安全係数  

定着プレストレス

土⼯構造物や⼀般構造物への永続作⽤のプレストレスは、所要の作⽤荷重に抵抗できる設計アンカー力以上のもとで、構造物施設の変位をゼロに保持できます。

定着プレストレスは初期緊張からのジャッキ除荷によるアンカー定着直後に作⽤するアンカーのプレストレスであり、これは⻑期継続の地盤クリープ沈下やテンドンの純リラクセーションなどの影響を受けて長期的に低下することから、これらを考慮して適正に割増した設計とする必要があります。

初期緊張力からのプレストレス挙動変化の関係

初期緊張力からのプレストレス挙動変化の関係

 
アンカー定着プレストレスの経時変化

アンカー定着プレストレスの経時変化(プレストレスPeの残存比β変化)

 

ライフサイクルコスト経済性

ライフサイクルコスト(LCC)とは、社会インフラ施設の建設段階と設計供⽤期間の保全段階を含めたコストであり、この最適化は同施設の⼀体的なマネジメントサイクルのもとに、同期間を通じて費⽤対効果がもっとも⾼くなる観点から検討することが求められています。

アンカー設計では建設コストとともに、保全コストである点検・調査コストや耐久性能評価による更新時期などのコストを含めて適正化することとし、ライフサイクルコスト(LCC)の最⼩化程度を検討する必要があります。

ライフサイクルコスト(LCC)を考慮した経済性評価

ライフサイクルコストLCCを考慮した経済性評価  

EHDアンカーHP⼯法と他⼯法の健全性調査の調査歩掛⽐較

EHDアンカーHP⼯法と他⼯法の健全性調査の調査歩掛⽐較  

アンカー引抜試験の計画

アンカー引抜試験は、アンカー体グラウトと地盤の摩擦強度を求めるものです。引抜試験のアンカー体長LAは、短い長さのケースでは、寸法効果により、摩擦強度が実際よりも大きめに評価されることから、計画に当たっては留意が必要です。

このため、本試験は、アンカー体長LA=3.0m以上で実施することが推奨されます。本試験を3.0m未満で実施する場合は、寸法効果を考慮して、試験結果の摩擦強度を適正に低減評価する必要があります。

なお、本試験では、テンドンとグラウトが付着切れせず、確実に地盤の摩擦強度を求めることが重要になります。

アンカー体の引抜試験の仕様事例

アンカー体の引抜試験の仕様事例